建築関係者は自分自身の現場だと思って、もう一度考え直さなければならない、悲しい事件(事故ではないと考えています。)が起きてしまいました。
新築を建てる時にも、修繕をする時にも、たくさんの人の手を借りなければ達成できないのが「建築」という世界です。
始めから終わりまで、ゆがみなく施工されなければ、人の命にもかかわるということを、私を含めた建築の関係者は肝に銘じなければなりません。
現場では経験豊富ないわゆる「職人」といえる方が少なくなってきています。作業をしている人たちが、ほとんど日本語のおぼつかない外国の人という現場も、少なくありません。また、厳しい仕事ですから長くたずさわっている人も、少ないのが現状です。
建築の技術は進んでいるが建築にたずさわる人の技術力は問われなくなっている
ただ建築の技術は進んでいるので、複雑な職人的技術がなくても建築可能な仕組みなどもあります。
プレカット工法がその代表ですよね。指示の通りに作れば、安全で早く建設ができる仕組みです。時間がかからなければ、もちろん、コスト面でも優しい。
良いことだらけのように感じますが、それがさらに、現場の技術力を低下させる一要因となっていると考えます。
技術力を問われなくなった現場はたずさわる人間の責任感をも低下させてはいないだろうか?
今回の八王子の階段崩落では、警察の調べが進んでおり、新たな事実が徐々に発表されています。
腐食が確認された木材には、法律で義務づけられている防水加工などの対策がとられていなかったことが分かりました。
アパート階段崩落で住人死亡 相模原の建設会社など捜索 警視庁 | NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210502/k10013009381000.html
安いのには理由があります。
建築を現実的な安全を重視して行った場合、やはり相当の額にはなってしまいます。そのため住宅ローンという庶民でもマイホームを持てる、夢の仕組みが出来たのかと思います。
そして、多くの消費者が住宅を持てる選択ができる今は、価格の競争が始まってきます。
より安い材料
より高利率的な工程
そんな段階を過ぎ、コストを抑えるためにできることをやりつくした後は、現場の人件費を削る方へとベクトルが進みます。
その提示された価格の安くなった理由を、きちんと分かって契約しているお客様が何パーセントいるのでしょうか。そして、その安くなった理由を細部まで説明している施工業者がどのくらいいるのでしょうか。
悪循環です。
その悪循環を止めることが出来る人が、現場に実はいるのです。
それが現場監督です。
これから求められるのは人間面でも技術面でも信頼できる現場監督
その現場の施工には、たくさんの工程があり、その工程ごとに職人が入れ替わって一つの建築を完成させます。
その工程を全て把握し取り仕切るのが、現場監督です。
そのはずなのですが、実際問題としてただそこに存在しているだけの、現場を見ない知識だけの人もいれば、現場にはよく来て見てはいるが知識がないため指示が的確でない人もいるわけです。
そこは、施工業者の人材育成にどれだけ重きをおき時間をかけているか、また、本人が自分のするべきことへの責任をどれだけ理解しまっとうしているのか。
結局は、どの業界でも同じことなのです。大切ことは分かっていますが、実行できているかと言われると、胸を張って即答できない。
自分の責任を全うできる人と仕事をしたい
業者を擁護するわけではありません。
しょうがないと思えるような厳しい状況です。ですが、ここは踏ん張っていきたい。
最後にそこに住む人が泣かなければならなくなる、現状がただただ悲しいのです。
そんな厳しい中でも、自分の責任を全うできる人と、私は仕事をしたいと考えてますし、私自身も常に一級建築士の責務をはたしたいと行動しています。
つまり、こんな世の中だからこそ、最後に問われるのは人間性だと、強く思うのです。